その心の奥の殿方は、私よりも年上で、前の夫を少し若くした感じでした。
背格好も似ていて、遠目で、あの人が帰って来た、みたいに勘違いすることもあったくらいです。

入門されてから茶道の腕前も、めきめき上達して、最近では詰客をしていただくこともあります。
姿勢がいいんですね、その方が座ると、座の雰囲気が締まる感じがして、とても素敵です。

もちろん、私にちょっかいを出そうなんてことは、なさいません。
もっと魅力的な方が、放っておかないのでしょう。

私のお教室は、殿方がいくらか多い方なんですが、茶道は厳粛なものですから、そんな浮ついたお気持ちで通われる方はいないのです。

むしろ、私が、秋が深まるにつれて、ひとりお布団に入る冷たさが、人肌を恋しくさせ、自分の身体を慰めるときのお道具にしているんですね、いけない女です。

自然と指が胸やあそこに這い行って、昔の男にされたことを自分でしてしまっているんです。

三つ首のバイブ、クリとアヌスとワギナを同時に責める嫌らしいお道具を、ずっと隠し持ってきました。

61nA7rqjNWL._AC_SL1500_





そう、あの男にされた時と同じ物です。
何回か壊れ、恥ずかしい思いをしながら、そういうお店に行って、買い替えてきました。

それと、淫靡な香りのするお香。
この香りの中でバイブを使うと、そのまま、あの頃が思い浮かびます。
スイッチを入れる前から、濡れて来ているのが分かります。

アヌスには、ローションを塗りますが、あとは、するっと飲み込んでしまう私の穴って、いつまでも、なんてスケベなんでしょう。

そして、バイブを押し込んだり、スイッチを入れて、見つめているのが、今は、その殿方っていうわけです。
やだ、妄想で、だけですよ。

そんな夜のことは内緒で、昼間、お稽古を終え、皆さんと雑談しているとき、馴染みのあの呉服屋さんから、お電話があったんです。
いいお着物が手に入ったので、一度ご覧になりませんかと。

なんでも、越後上布で人間国宝の手によるものだそうです。
是非見せてくださいと言っていると、お弟子さんたちも見たいという話になり、総計5人で押しかけることになってしまいました。
百万単位のお品ですから、滅多に触れられません、私も、目の保養にと思って、その足で出かけました。

越後上布、雪国の宝石のような布です。
店のご主人の説明で、皆さん、感動してしまいました。
およそ1400年もの間、その技術は受け継がれ、およそ70もの工程を、全て人の手によって、行っているということです。

手仕事の積み重ねで、できた越後上布は、約2年の歳月をかけて美しい布になります。
夏の装いの最高峰のひとつである越後上布の輝きと、ひんやりとした生地の質感は、この秋の時節には早すぎますが、来春の仕立て上がりが楽しみでもあります。
帯や帯締めも、当然、吟味しなくてはなりませんから、今からあれこれ考え、思いを巡らせるには、早いということはありません。

女の方は、皆さん欲しいと思ったに違いありません。
男の方は、ご自分の大切に思う方に着せてあげたいと思われるのでしょうか。

茶道具もそうですが、良いものはそれを使い、纏う者を、高貴な気持ちに誘ってくれるものです。
たとえ、今はそれにそぐわない自分であっても、いつかこうなりたいと思わせ、精進させてくれるものなのです。

いつか私もと、密かに思いました。